宅建は不動産業界で働く人のみならず、他業界の会社員から主婦や学生まで幅広い人たちが受験するような人気資格です。
この記事を見ている方の中にも、これから宅建の試験に挑むという人も多いんじゃないでしょうか?
ちなみに本記事を執筆している私は2014年に宅建試験に合格しました。
不動産会社の営業マンとして働きながらの合格なので、限られた時間の中で効率的に勉強をして合格を勝ち取れたと自負しています。
そしてそんな私の経験が、これから受験される方に少しでも役に立つのではないかと考え本記事を執筆するに至りました。
宅建資格についての概要から合格するための勉強法、おすすめの参考書まで、非常に濃い内容になっています。
是非参考にしていただければ幸いです。
宅建とは
宅建とは正式には宅地建物取引士と言い、不動産会社が一般消費者と不動産取引をする際に必要となる資格です。
具体的には
を行うために必要とされる資格です。
主に不動産会社に従事する営業マンに必要とされる資格ですが、不動産知識はあらゆる業界で需要の高い知識のために、数ある国家資格の中でも非常に人気の高い資格で、平成29年の受験者数は20万人を突破するようなモンスター資格です。
人気がある理由
そもそも宅建はなぜここまで人気のある資格なのでしょうか?
理由は色々とあるでしょうが、筆者は人気の理由を以下のように考えています。
需要が高い
何より転職市場において非常にニーズの高い資格であるという点が人気の理由だと思います。
不動産業者は宅地建物取引業法によって取引士の設置義務があり、事務所ごとに5人に1人の割合で宅地建物取引士を在籍させなければなりません。
毎年新卒採用を行うような大企業であれば人事異動でどうにでもなりますが、地場の小さな不動産会社になるとそうもいきません。
10人以下の小規模な不動産会社だと1人の取引士が生命線だったりするので、もし取引士が辞めるとなったらすぐにでも宅地建物取引士の有資格者を求人で募集をかける必要が出てくるというわけです。
士業資格
宅建は以前まで「宅地建物取引主任者」という名称でしたが、2015年4月1日より「宅地建物取引士」という名称に変更されました。
弁護士や税理士と同じく「士」の付く名称へと変更されたことにより、従来よりも権威性の高い資格になったようにも見えます。
「なったように見える」というのがミソで、正直に言って試験の難易度や宅建士の独占業務の内容自体は以前と何ら変わっていません。
とは言え「士」のつく国家資格の中では比較的難易度が低い資格であることも宅建が人気資格である要因の一つかもしれません。
難易度
資格 | 難易度 | 勉強時間 |
弁護士 | ★★★★★ | 8,000時間 |
弁理士 公認会計士 税理士 | ★★★★☆ | 5,000時間 |
司法書士 | ★★★★☆ | 4,000時間 |
不動産鑑定士 | ★★★☆☆ | 1,800時間 |
1級建築士 | ★★★☆☆ | 1,500時間 |
中小企業診断士 | ★★★☆☆ | 1,300時間 |
社会保険労務士 | ★★★☆☆ | 1,000時間 |
日商簿記1級 | ★★☆☆☆ | 800時間 |
行政書士 | ★★☆☆☆ | 600時間 |
宅地建物取引士 | ★★☆☆☆ | 350時間 |
社会福祉士 | ★☆☆☆☆ | 150時間 |
日商簿記3級 | ★☆☆☆☆ | 50時間 |
(※勉強時間はあくまでも目安です。個人の能力により異なります。)
宅建を他の資格と比較した場合の難易度はおおよそ上記の表の通りです。
ご覧いただければお分かりいただける通り数ある士業の中では比較的難易度の低い資格となっています。
とは言え最低でも350時間の勉強時間は必要となることを考えれば誰でも簡単に合格できる試験とも言えません。
合格率
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格点 |
平成20年 | 209,415人 | 33,946人 | 16.2% | 33点 |
平成21年 | 195,515人 | 34,918人 | 17.9% | 33点 |
平成22年 | 186,542人 | 28,311人 | 15.2% | 36点 |
平成23年 | 188,572人 | 30,391人 | 16.1% | 36点 |
平成24年 | 191,169人 | 32,000人 | 16.7% | 33点 |
平成25年 | 186,304人 | 28,470人 | 15.3% | 33点 |
平成26年 | 192,029人 | 33,670人 | 17.5% | 32点 |
平成27年 | 194,926人 | 30,028人 | 15.4% | 31点 |
平成28年 | 198,463人 | 30,589人 | 15.4% | 35点 |
平成29年 | 209,354人 | 32,644人 | 15.6% | 35点 |
合格率は以上の通りです。
宅建の合格点は相対評価を採用しており、その年の受験者の平均点によって合格点は変動します。
概ね33点~36点が合格点になっているので、自己採点で37点をとっていればほぼ合格を確信しても良いと言えます。
5点免除
不動産の営業に従事されている方は5点免除試験を受けて、本試験で5点を保持した状態で試験が受けられます。
そして気になる試験内容はというと、めちゃくちゃ簡単な内容になってます。
そもそもなぜ5点免除なる制度があるのかというところに着目しましょう。
なぜ簡単なのかと言うと、宅建試験は従来よりも受験者数が増え過ぎてしまい、勉強時間のとれる主婦や学生にかなり有利な試験となり、本来この資格を必要とする不動産業に務める人たちが資格を取りにくくなってしまったからなんです。
しかし不動産業に務めているからと言って無条件で5点を与えるわけにはいきません。
きちんとした知識のある者を事務所に起き、きちんとした知識のある者にしか重要事項の説明を読ませないという前提が崩れてしまうからです。
その前提を崩さない為に試験という形で一応は体裁を保っているわけです。
そして、その試験は民間の資格予備校等に委託されています。
資格予備校にとって、この5点免除試験は、自分のところに入会してもらうための宣伝の絶好の機会です。
5点免除試験合格率の高い予備校で試験を受けたいというのが当然の心理でしょう。
その為に予備校としては1人でも多く5点免除試験に合格させて、その年の5点免除試験合格者数データに計上させ、来年度の宣伝としたい。
そうなると、必然的に試験は簡単になるわけです。
5点免除試験の内容
繰り返しになりますが、試験内容は驚くほど簡単です。
僕は運転免許の筆記試験より簡単だと思いました。
運転免許の筆記試験は、最低限の知識は要求されますよね?
例えば進入禁止のマークを「このマークは進入禁止だ」と、知識として知っていなければ試験は解けません。
でも5点免除試験はそのような事前知識はいりません。
驚くことに、試験問題をその場で見て考えて解けてしまうんです。
さらに驚くことに、考えるのは宅建のことではなく日本語を考えるだけで解くことが可能です。
例えば
1.〇〇は、△△ではない
2.〇〇は、△△では決してない
3.〇〇は、絶対に△△ではない
〇や△に何が入るかは分かりませんが、なんとなく2や3は間違ってそうなのが分かりますよね?
大学受験の現代文とかでも学ばれたかと思いますが
という、言い切りの文言が入っていたら間違いという前提で解くように学ばれたかと思います。
これってもはや宅建の知識全くいらないですよね?
はっきり言って僕の年の5点免除試験の内容はほぼすべてこんな感じでした。
宅建の知識ではなく日本語を考えれば分かる試験です。
こんな簡単な試験を受けて5点もアドバンテージが得られるなら取らなきゃ損です。
不動産会社にお勤めの方は必ず取得してください。
おすすめテキスト
筆者がおすすめするテキストはLECの出る順シリーズです。
筆者はLECには通ったことがないので回し者でもなんでもありません、ご安心ください。
このテキストをオススメする最大の理由は情報量がちょうどいいという点です。
人気が高い定番の宅建参考書シリーズと言えば「パーフェクト宅建」「らくらく宅建塾」「出る順」の3シリーズです。
この3シリーズ、すべて特徴が異なります。
パーフェクト宅建はその名の通り宅建の知識をパーフェクトに得られるほどの内容量になっておりますが、正直に言って本試験で絶対に出ないような内容すら網羅されているレベルです。
宅建で重要なのは「みんなが正解する問題を必ず正解して他の人が正解できない問題をちょっとだけ多めに正解する」ことです。
絶対に満点を狙う試験ではありません。ここが本当に重要です。
不必要な知識を吸収し過ぎてしまって、むしろ絶対に落としてはならないようなみんなが正解するような問題を試験時に忘れてしまっては本末転倒です。
そういう意味でパーフェクト宅建シリーズは情報量が多すぎるんです。
で、逆にらくらく宅建塾は情報量が少なすぎます。
らくらく宅建塾は「みんなが正解する問題を必ず正解する」レベルの情報量はしっかり網羅していますが「他の人が正解できない問題をちょっとだけ多めに正解する」レベルの情報量が不足しています。
宅建は33点や34点では合格を確信することが出来ません。自己採点で合格を確信するには最低37点を取る必要があるんです。
このように「合格するための情報量」という意味でもLECの出る順シリーズは最適な情報量だと私は思います。
ちなみに筆者はこのテキストで46点で合格できたので、それくらいの高点数もしっかり狙える内容になっています。
通学or独学
宅建の試験を受けようと思い立ったらまず
「一人で勉強をするのか?」
「資格の学校に通うのか?」
という問題が出てきます。
まず初めに言っておくと、宅建は基本的には一人で勉強して合格できる試験です。
なので個人的には独学で勉強することをオススメします。
ただし、中には通学した方がいい人もいます。
どっちでやるべきかを判断するために、まずは独学のメリット・デメリットを把握しておきましょう。
独学のメリット
まず独学のメリットとして
という3点が挙げられます。
お金がかからない
独学最大のメリットはやはりお金がかからないという点です。
資格の学校へ通う場合、入学する時期、受けるコース、学生なのか社会人なのかによっても変わってきますが、数十万円近いお金がかかると思ってください。
一方独学の場合は、まぁこれもどのテキストをどれくらい買うかによりますが、概ね1万円以下で収まるはずです。
お金のない学生や家庭を持つ社会人たちにとって資格の学校に通うお金は決して安いものではないでしょう。
時間を有効に使える
資格の学校に通うとなると資格の学校へいく為の移動時間というものが必ず発生します。
仮に最寄りの資格の学校に行くのに30分かかるとしたら往復で1時間。
それが週に1回、月に4回の授業だと合計4時間を無駄にすることになります。
4時間あれば過去問2年分を解くことが出来ます。
もちろん電車の中等でも勉強をすることは可能ですが「今はどの駅だ」などと余計なことを考えなければならず、周りでしゃべっている人がいれば当然気が散るでしょう。
なかなか電車の中で勉強のみに没頭するということは難しいものです。
さらに、外出するとなると周りは誘惑でいっぱいです。
飲食店によったりコンビニに寄ったり、資格の学校で仲良くなった人とだらだらしゃべったり。
そういう一切の誘惑が排除できるのが独学最大のメリットです。
自分のペースで勉強が出来る
例えば「宅建業法は結構理解出来てきたから税法に力を入れたい」と思っていても、資格の学校の場合は進行が一定なので、周りの生徒たちと全分野同じペースで勉強をしていかなければなりません。
独学で勉強をする場合はこれらの縛りは一切ないので、自分が不得意だと思う分野を集中的に勉強をすることが可能です。
やはりこれも独学の大きなメリットでしょう。
独学のデメリット
続いて独学のデメリットですが
という2点が挙げられます。
自己管理の徹底が求められる
資格の学校に通う最大のメリットは
「勉強をせざるを得ない環境」
という点です。
自己管理が苦手な人でも嫌でも毎週のように宿題が出されるし、強制的にテストを受けさせられ場所によっては点数を晒されて恥をかくことになるし、授業中に寝ていようもんならたたき起こされます。
しかし独学の場合はこういった制御をすべて自分自身で行わなければなりません。
当然のことながら「何時から授業開始」という風に勉強のスイッチは誰かが入れてくれるわけでもなく自分自身でやる気にならなければならないし、眠くなればいつでも眠ることは出来るし、過去問を解いて点数が悪くても恥をかくこともありません。
独学で勉強する人たちにはこのような徹底した自制心というものが求められるので、自己管理能力が低い人たちにとっては大きなデメリットとなるでしょう。
お金がかからない
メリットのところで「お金がかからない」ということを挙げましたが、これが人によってはデメリットになる可能性もあります。
資格の学校へ通う人たちというのは少なからず
「数十万円というお金をかけたからには無駄にしたくない」
という自負を持っています。
しかし独学の人たちはそのような人たちに比べあまり多くのお金がかかっていません。
なので人によっては直前期に
「お金かかってないし、別に落ちてもいいか」
という諦めの材料になってしまう可能性もあります。
独学で臨むべき人
以上が独学で宅建の試験に臨むことのメリットとデメリットです。
では一体どういう人が独学で勉強すべきで、どういう人が資格の学校に通うべきなのでしょうか?
これについては、勉強の習慣があり資格の勉強に苦手意識がない人は是非とも独学で臨むべきだと思います。
例えば現役の大学生であったり、資格を何個もとっている主婦などがこれに該当します。
こういう人たちは、資格の学校の授業スピードがかえって自分の勉強の効率を落とす可能性すらあるので、資格の学校に通うべきではないでしょう。
通学すべき人
逆に勉強が苦手な人や過去に何度か試験に落ちた人に関しては資格の学校に通学することをオススメします。
ちなみに学校に通ってきちんと予習・復習すれば取れる!なんて全く思ってないです。
そもそも勉強が苦手な人や落ち癖がついている人が資格の学校に通ったところでそんなメンドクサイはやりません。
僕が資格の学校に通うことを推奨する理由はそういうところではありません。
「ヤル気スイッチ」が見つかる可能性があるからいくのです(大真面目です)
不動産業にお勤めの方とかは特にそうなんですが、上司に「宅建を取れ」とか詰められて嫌々勉強をしたって試験にはまず受かりません。
予備校の先生に言われたってやるわけがないのです。
これは別に宅建に限った話ではありませんが結局のところ試験勉強って本人が「よしやろう!」っていう気持ちにならないと絶対にやるようになりません。
でも、そのヤル気ってふとした時に沸き起こるものです。
僕の会社の上司で学校にも通わずに10年連続で試験に落ちている人がいました。
僕は入社1年目で宅建を取ったので、その上司に資格の学校へ通うことをおすすめして、その上司は通うことにしました。
その上司は春頃はちょこちょこ学校をサボったりしてました。
しかし、夏が終わる頃には週2で休みをとり、毎週学校に通い、仕事も定時であがって勉強をするようになっていました。
彼に一体何が起きたのか。
夏のある講義のときに行われた小テストで、運良く校内3位という成績を残したのです。
こんな小さな成功体験でも人って秘めていたやる気が突如として沸き起こってくるものなのです。
で、最終的にはその上司は10年連続で落ち続けた宅建の試験にその年合格することが出来ました。
しかしこのヤル気スイッチ、何もないところからは見つかりづらいです。
つまり、仕事しながらたまーに1人でテキストとにらみっこしながら勉強をする生活を続けててもいきなりやる気が産まれるようなことは起こりづらいです。
やる気というものは、起こるべきところで起きるものです。
こういう、新たな環境で外的要因が加わらないとヤル気スイッチは見つかりません。
僕が資格の学校に通うことをおすすめするのはこういう理由です。
1人で勉強して毎年落ちている人は、絶対に通って下さい。
出題傾向
宅建の本試験は過去に出た問題と似たような問題が出ることが多いです。
過去の傾向が全く覆されて「今年は全く新しい問題しか出しません」なんていうことはまず考えられません。
ですがこれからの宅建試験は過去に出てきた問題だけを解いていても通用しなくなってくる可能性が非常に高いです。
近年の宅建の試験は、大幅に出題範囲を変えたりするようなことはしていませんが、問題の出し方を少しずつ変えて来ています。
恐らくそれは、まさに過去問一辺倒で臨んでくる人が多いため、宅建の試験に合格したにも関わらず不動産業の実務において知識が生かされていなかったりとか、そういう背景があるんじゃないかと思います。
では近年の問題がどう変わってきているのかというと、最も代表的なものでいえばいわゆる個数問題です。
というやつです。
この問題、非常に厄介です。
今までのスタンダードな問題の出し方である
「正解を選択肢の中から1こ選べ」
っていう問題であれば、仮に正解なのか不正解なのか分からない選択肢があったとしても絶対に正解だと分かる選択肢が1個分かれば正解できる可能性がありました。
つまり知識が多少あいまいでもまぐれで正解できる可能性があるということです。
しかし個数問題だとこうはいきません。
正解の数、間違ってる数を選ばなければならないので、4つの選択肢すべてに〇×をつけられなければ正解できないのです。
こうなるともはやあいまいな知識では太刀打ちができません。
これはまさしく、まぐれで正解する人たちを減らすための出題形式です。
だからこそ、この個数問題に立ち向かうにはするには、きちんと各分野を理解するような勉強をしなければならないのです。
過去問一辺倒で合格できる時代は確かに過去にあったかもしれません。
ですが、宅建という資格は近年間違いなく難化する傾向にあります。
それは今後も続くでしょう。
宅地建物取引主任者から士業である宅地建物取引士に変わったからです。
これは不動産屋というちょっとダークなイメージを払拭するため、士業たる格式高い資格にするべく難易度を上げてきているのでしょう。
いずれにせよ過去問だけで受かる時代は終わりました。
勉強法
それでは具体的に宅建の勉強法についてご紹介させていただきます。
テキストをしっかり読む
たまに
「宅建の試験は過去問を繰り返し解けば受かる」
という話を耳にしたことがないでしょうか。
これはある意味正解ですが大きな間違いです。
確かに過去問は絶対に解かなければなりません。
各分野の出題頻度には確かにある程度傾向があったりするので、何も考えずに全分野同じウェイトで覚えようとする非効率な勉強を回避することが出来るからです。
ただし過去問だけやっても受かりません。
過去問一辺倒の人は繰り返し繰り返し解くうちに得点も上がり回答スピードも次第に速くなっていきますが、これはその人の中で問題のパターン化がされているからそうなっているだけに過ぎません。
だいたいの人が答えを暗記しちゃってるか、答えを暗記してなくても
「あ、このワードが出ると×だ」
みたいにパターン化して解いたりするということです。
過去問だけに特化してパターン化に頼り過去問に正解しまくり安心している人は、本試験で少し問題形式を変えて出されると解けないことが多いんです。
それはテキストを使って正しく理解出来ていないから応用が利かないからです。
もちろん条件反射的に問題の答えが分かるようになることは非常に大事ですが、それはテキストでしっかりした知識が身についている人の話であって、過去問の人がやるのは過去問の知識に基づくパターン化なので過去問にしか対応できないのです。
本試験のひっかけ問題とかにまんまとひっかかってしまう可能性が高いということです。
また、たまに
「宅建のテキストを1、2週読み込んだらあとはずっと過去問を繰り返し解け受かる」
という話も耳にします。
「過去問だけでOK」論者よりはまだマシですがでもこれも間違いです。
宅建という試験は最後までテキストと過去問の両輪で挑む試験です。
テキストも過去問も宅建合格をつかむその瞬間までどちらかを使わなくていいなんていう日は絶対にやってきません。
過去問とテキストは必ず横に並べて勉強しましょう。
テキストをまず読む。そして過去問を解く。
過去問で間違えた箇所は、横においてあるテキストを開いて正しい答えを探し出す。
この勉強法こそが宅建試験には求められます。
宅建業法をマスターする
宅建業法は宅建の試験で一番ウェイトが置かれている項目です。
不動産業務にもろに直結する内容なので当然と言えば当然です。
そして、この宅建業法が取れるか取れないかが合否の分かれ目になると言っても過言ではありません。
全科目50点満点の試験で宅建業法は20点を占めています。
そして、皆さんが目指すべきは18点以上です。
他の分野が取れるか取れないかも当然かかわってきますが、宅建業法で15点未満の人は不合格を覚悟した方がいいでしょう。
何度も言いますが、宅建業法は一番重要な分野であり一番点が取りやすい分野です。
毎年落ちるような人ですら宅建業法だけはなぜか仕上げてきます。
覚えやすい上にとっつきやすいからです。
宅建と言う試験は、みんなが正解する問題は自分も確実に正解し、正解と不正解が分かれる問題をどれだけ多く正解できるかが問われる試験だということを念頭に置いておきましょう。
宅建の試験は「宅建業法で15点以上とって初めて戦いの土俵に上がった」と考えてください。
で、これから宅建の試験勉強を開始する人はまず宅建業法からマスターして欲しいんですが、何も考えずにただがむしゃらにやっていても効率が悪いです。
科目別に勉強戦略というのは異なるので、宅建業法には宅建業法に合った勉強戦略を練る必要があります。
ここでは宅建業法の正しい3種類の勉強戦略をお話しします。
宅建業法の意義を常に念頭に置く
宅建業法を勉強するときや宅建業法の過去問をとくときは常に
「宅建業法は一般消費者を保護する為の法律である」
ということを常に念頭に置いておきましょう。
不動産業者が有利になるような内容の問題が正解になることは原則ありません。
例えば自ら売主制限の「クーリングオフ」
典型的パターンですが
さて、これはクーリングオフ出来るでしょうか?
事務所で契約しているから出来ない?
正解は「出来る」です。
申し込みと契約の2段階を踏んでいる場合は契約場所はもはや関係がありません。
申し込み場所で判断することになります。
申し込み場所はド〇ールコーヒーなのでこの場合はクーリングオフが出来ます。
契約となると重要事項説明やなんやで3時間くらいかかるので、一般消費者は仕事がない日を狙ってきちんと空いている日でないと締結しづらいです。
ただ、物件を見た日から1週間後とかに契約日を設定すると、時間が空いて客の気持ちが変わってしまう可能性があります。
不動産屋はこれを嫌がります。
不動産屋としてはがっちり客のグリップを握っておきたいので、契約書ではなくても、契約の意思表示をさせる”申し込み書”なるものを書かせます。
これは
「自分の意思で申込書を書き、自分で重要な決断をした。」
と客に思い込ませることで契約という行為を軽んじさせない為の行為です。
でも、後日不動産業者が
「いやいや旦那、あなたウチの事務所で契約書に署名捺印して、それに印紙貼ったろ?クーリングオフは出来ませんよ!申し込み書?あんなの単なるメモ書きですわ!」
って言ってくる可能性があります。
宅建業法はそれすらも想定して、徹底的に一般消費者に保護する為、申し込み書を書いた場所をクーリングオフの判定基準にしているのです。
こんなかんじで、宅建業法は一般消費者が原則有利になるように出来ています。
宅建業法においてこの原則が覆ることはほとんどありません。
その為、宅建業法を勉強するとき、宅建業法の過去問を解くとき、常に一般消費者の保護のための法律であると意識しながら勉強しましょう。
宅建業法は体系的に理解すること
宅建業法は体系的に理解することが非常に重要です。
例えば業者免許と取引士の項目で
「業者免許の項目を勉強したら問題解いて、解き終わったら次は取引士の項目だ!」
という、点と点で学ぶ勉強方法は絶対にNGです。
この項目を勉強するときは必ず二つのページを見比べながら勉強し、問題を解くときも一緒に解くことが大事です。
この項目は「業者免許」と「取引士」という2つの分野ではなく「業者免許と取引士」という1つの分野なのだと考えてしまいましょう。
点と点をしっかり線で結んで勉強すること。
このように全体像で捉えようとする勉強方法が体系的理解です。
ただ、体系的理解とは言ってもいちいちそれぞれのページを行ったりきたりするのも面倒です。
だから、業者免許と取引士の項目が1つの表にまとめられているページがある参考書を必ず買いましょう。
業者免許と取引士のところ以外にも、こういった体系的理解が必要になる科目・分野はいくつかあるんですが、業者免許と取引士の項目すら1つの表でまとめてくれないような参考書はどうせ他の科目や分野もまとめてはくれていないと思います。
この分野はそれぞれ分けて勉強してたら絶対に混乱するので、体系的理解を助けてくれないような気の利かない参考書だけは絶対に避けましょう。
筆者は現役の頃はLECの出る順宅建士合格テキストを使用していて、出る順はあらゆるところで体系的理解を補助してくれるような作りになっているので特にオススメです。
しっかり暗記
最後に宅建業法を勉強する上で必要になるのが暗記です。
当然、きちんとテキストを読んで理解するところは理解しましょう。
しかし暗記が必須な場所もあり、このような項目は読んでいるだけではダメです。
例えば
契約書と重説は、それぞれ記載しなければいけない項目が定めれています。
しかもこの項目は、どっちに何が記載されているかという問われ方をされる問題が出ます。
きちんと
これをしっかり暗記しましょう。
こういう項目は読んで理解するだけでは不十分です。
宅建業法をする際には
これで勉強に臨みましょう。
模擬試験は受けた方が良いのか
模擬試験について、私は是非とも受けるべきだと答えています。
筆者も本試験直前の9月に行われた全国統一模試を受けました。
その理由をお話しさせて頂きます。
精神面を鍛える
本試験では、知識以外の要因で問題を間違えてしまう可能性というのが少なからず存在します。
知識以外の要因とは例えば「過度の緊張により冷静な判断力が落ちてしまう」ということなどが挙げられます。
どんなに緊張やストレスに耐性がある人でも、家や図書館などでリラックスした状況で過去問を解くのと、たくさんのライバルたちが周りにいる中、静寂に包まれた試験会場で本試験を受けるというのとでは、精神的な安定感は異なるものです。
せっかくたくさん勉強をし、何度も過去問を解いてきたのに、問題を間違えてしまった原因が精神的な理由だなんてちょっと自分の中では納得しきれないでしょう。
ただ、知識による勝敗は、本番前日までにやってきた勉強量でほぼ決まっているようなものなので、なんだかんだで本試験当日の勝敗を分けるのは案外精神的な部分であったりするものです。
そして全国統一模試というのは、ある意味でこの「精神面」を鍛えることが出来る試験なんです。
このような本試験さながらの環境を模試で一度味わうことが出来るのです。
これを本番直前に経験したかしていないか、というのは本試験当日の精神状態で大きな差になると言えるでしょう。
気を引き締める
本試験直前って、ガチガチに勉強に集中できている人がいる傍ら、気が緩んでいる人っていうのが案外多いものです。
この気が緩んでいる人っていうのが2パターン存在します。
この2パターンです。
諦めかけている人たちは、宅建の試験勉強をするためのエンジンをかけるきっかけというのがなかった人たちです。
漠然と「あぁ10月に本試験があるんだなぁ」くらいの考えで、宅建試験というものが具体的にイメージ出来ていないんです。
ただ、全く勉強をしてこなかった人たちでも、不思議なことに本試験前日ってみんな勉強をしたりしますよね。
これは、本試験が翌日に控えてようやくエンジンが入ったらです。(遅すぎますが)
彼らのエンジンが入るきっかけが試験そのものであるのなら、それを本番の前に一度味わうことが重要です。
つまり模試ですね。
本番さながらの環境で問題を解き、全く分からない問題たちに遭遇して「やっぱりやらなきゃやばいな」と思えるかもしれません。
合格を確信している人たち、つまりそれなりの勉強量をこなしていて天狗になってしまっている人たちのことです。
こういう人たちは合格を確信するあまり、余裕コキ過ぎて9月あたりから勉強量が落ちたりします。
勉強をきちんとしてきた人たちに仕掛けられた9月トラップです。
こういう人たちは、試験前に一度未知の問題を解き、間違えて、ヘコんでおいた方がいいでしょう。
過去問をやりこんで自信がついている人って案外新しい問題に挑戦すると応用がきかなかったりする可能性があるからです。
合格できると過信している人たちは一度ヘコんで気を引き締めなおすためにも模試を受けるメリットはあるということです。
宅建を取得しないデメリット
不動産業界に従事すると、あらゆるケースにおいて宅建の資格の有無というのが天秤にかけられます。
しかし、現実には宅建の資格を持っていない営業マンというのは不動産業界にはかなり多く存在します。
僕が以前働いていた職場では50歳になっても宅建を持っていない人がおり、毎年の恒例行事のように宅建の試験を受けていました。
僕は、こういう人に対して強烈に疑問に思っていました。
なぜ不動産という業界に長年いるにも関わらず、宅建も取らずに平然していられるのだろう、と。
皆さんの会社にも少なからずこういう人はいるんじゃないでしょうか?
残念ながらこういう人たちは、周りから冷ややかな目で見られ、出世の道も閉ざされています。
はっきり言って不動産の営業に従事する人が宅建を取得していないというのはデメリットしかありません。
ここでは宅建を取得していない営業マンが背負う3つのデメリットを紹介します。
できる仕事が限られる
不動産の仕事に従事されている人たちであればあえて言わなくても十分わかっていることだとは思いますが、宅建を持っていないと
これらの業務が遂行出来ません。
その為、持っていない人は宅建を取得している取引士に読み合わせと押印をお願いすることになろうかと思います。
これらの業務が一人でこなせないと、それに付随して
という制約も生じてきます。
自分の仕事は自分がやりやすいように段取りするのが一流の営業マンだと思いますが、宅建を持っていない人はそれが出来ません。
自分が「この日に契約日を設定したい」と思っても、取引士の都合が悪ければそれも出来ません。
これはもうデメリット以外の何物でもないでしょう。
取引士に比べて給料が低い
多くの不動産会社で宅建を取得していると資格手当という形で給与が上がります。
僕が依然働いていた会社では宅建を取ると毎月給料が3万円上がりました。
年間で36万円、これは非常に大きな金額だと思います。
いえ、歩合やボーナス査定で給与が左右される生き物が営業マンなのですから、営業マンたるもの、こういった数字にも執着出来なくてはいけないと思います。
第一印象がマイナスからのスタート
正直、これが一番大きなデメリットかなと僕は思います。
宅建を取ると、多くの不動産会社では名刺に
「宅地建物取引士」
と記載されます。
そして、名刺を交換した際、宅地建物取引士の記載がない場合
「あぁ、持ってないのね・・・」
という目で見られることになります。
このように見てくるのは不動産の同業者だけではありません。
近年では一般のお客さんもインターネットで知識を付けている人が多く、不動産情報のサイトから
「担当の営業マンが宅建を持っているかどうか名刺を見て確認しろ」
などと吹き込まれているケースも非常に多いです。
本当に慎重なお客さんだと「宅建の有無」だけでその担当からの申し込むか否かの判断材料にする可能性すらあります。
お客さんからも同業者からも宅建の有無で天秤にかけられてしまうんです。
契約取ってナンボの営業マンにとってはデメリットというより、もはや致命傷と言えるでしょう。
昇進に関わってくる
宅建を昇進の物差しとする不動産会社は多く存在します。
大手の不動産会社になると、顕著にその傾向が見られます。
また中小・地場の不動産会社であってもある程度までは出世できますが、一定の位まで来るとそれ以上は宅建がなければ出世できないというボーダーを設けていたりします。
僕が以前働いていた会社でもそのようなボーダーが設定されており、本当に仕事が出来る所長なのにもかかわらず、宅建がないが為に出世が阻まれていて、その人よりも明らかに能力的に劣る人が代わりにその人よりも上の職に昇進したりしていました。
宅建がないという事実がここまで己の可能性を狭めてしまうことになるのです。
まとめ
宅建は転職市場で常に人気の高い資格ですし、不動産会社に勤める人にとっては資格手当が出たり出世の是非を判断する一つの要素ともなりえます。
これはすなわち、たった数か月の努力で今後皆さんが得られる給料が何倍と変わってくる可能性のある資格とも言えます。
つまり早く取得すればするほど沢山のお金が得られる可能性があるということです。取得は早い方が良いのは間違いないですよね?
初めて受験する人は一発合格を狙っていただき、何度も落ちている人は是が非でも今年合格を掴み取りましょう。
皆さんの合格を祈っています。